砲弾

腹の底から響きわたるような地鳴りが2度あった。
その一時間前には、3度の砲弾がいつものように響いていた。

私の住むキブツ・HANITAはレバノン国境沿いに位置する。
砲弾はいつものことで、ヒズボラがイスラエルの偵察機に向けて放ってるとのこと。
3年前にイスラエル軍がレバノン南部より撤退してからというもの、
キブツの周辺は新道路建設やフェンス建設で、警戒態勢を整え、
イスラエル軍の基地も直ぐ近くにあるため、常時、軍の兵隊が出入りしている。

だが、一度も危機感を抱いたことがない。
砲弾が鳴り響く中、平常どうりの生活を営んでいる。
深夜に何発もの砲弾が鳴り響くこともある。
一瞬、胸がドキっ!と高鳴り、静かに事の成り行きを見守る。

そんな日常が続いている中、今日も3発の砲弾があった。
しかしその時、ヒズボラのゲリラグループによる3発の砲弾が、
キブツHANITAの直ぐ下の町Shelomiを直撃し、(HANITAは丘の上にある)
16歳の少年が死亡していることなど、知りもしなかった。
3発の砲弾が止み、それすらも30分後には忘れていたくらいだ。

しばらくして、突然、窓がきしみ、胸の奥から巨大な太鼓をたたかれたような、
強烈な衝撃があり、一瞬すべてが停止した。
3分後にさらにもう一度同じ事が起こった。
後になってわかったことだが、その衝撃はイスラエル軍による報復爆撃だった。
砲弾の音は花火の音とたいして変わらないので、それほど驚かなかった。
しかし、胸から突き上げてくるような、本当に心臓が止まりそうなほどの、
大きな衝撃を受けたのは、今回が初めてだ。
何も知らなかった私は、ただ「いったい何なんだ、これは?」と不審な思いを抱き、
何かしら言い知れぬ気持ちに駆られて、ただ不安な思いをしただけだった。

1昨年前にも、ヒズボラのゲリラが国境を越えてShelomiの町周辺道路で、
無差別銃撃を行い、6名の死者がでた。
その中の二人はこのキブツHANITAの住人だった。

先日戦場フォトグラファーのヤスさんが、HANITAを訪れた時、
レバノンとの国境の写真を取りながら「怖いよ、ヒヤッとするよ」と、言っていた。
私にはその本当の意味がわかっていなかった。
毎日フェンスで囲まれた道路をランニングし、部屋からはレバノンを眺めている。
そんな日常のなかで、もし恐怖を感じていたら、ここに住んでいることは無理だ。
戦場を多く見ているヤスさんは、この国境の緊張状態を敏感に感じとっていたのだ。
そんな矢先に、レバノンからの砲弾による死者が出た。
ヒズボラは、イスラエル軍の偵察機を狙ったもので、民間人を狙ったものではない。
と表明しているが、その時、イスラエル軍の偵察機は飛んでいなかった。

今回の事件をどう受けとめるべきか、正直、自分自身でもわからない。
いまだに恐怖を感じないのだ。
というより、恐怖を殺しているようなものだ。
解決策は何一つない。慌てふためいてどうにもならない。
まさに目と鼻の先で起こっている事体に、どう対処したらいいのかわからなくなっている。
それほどまでに、私の感覚は紛争・戦闘状態というものに麻痺している。
しかし、今回の事件のよって、レバノン体制はより緊張感を持つだろう。
シェルターに入らなければならない日もやってくるかもしれない・・・・・

殺された少年の母親が、
「何とかしてくれ!何とかしてくれ!」
と泣き叫びながら、少年の写真を抱えていた姿が眼に焼きついている。

「なんとかしてよ!もう十分だよ。頼むから、なんとかしてよ!」
声にならない叫びが、イスラエル中から聞こえてくる。
悲しみはもうたくさんだ。

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