村上春樹の壁と卵と架け橋

村上春樹氏のエルサレム賞授与でのスピーチは、武器や軍備を使う体制を批判した、まさにエルサレム賞の趣旨「社会における個人の自由の理念に貢献」する作家として、立派なスピーチだったと思います。体制を「壁」、人間を「卵」にたとえて、「壁」がどれほど正しいとしても、また「卵」がどれほど間違いだとしても、私はいつも「卵」の側に立つ、何が正しいかは、歴史が決めると語りました。

「壁」はガザ紛争でのイスラエル軍であり、ハマスであり、「卵」はパレスチナの人々であり、イスラエルの国民でもあり、村上氏のガザ紛争への反戦の意がこめられていました。エルサレム賞を受賞し、様々な議論の中で、こうしてイスラエルへ来て直接に語り掛けた氏の心意気に、作家として信じられるものがあると感じます。

スピーチでの「壁」と、報道陣へ語ったコメントの中の「架け橋」は、西岸に建設されたパレスチナとイスラエルを分かつ高く、強く、冷たい壁を連想させます。というのも、壁の建設の際に、シモン・ペレスが語った言葉とリンクするからです。

当時、イスラエル国内はパレスチナ過激派の自爆テロで、多くの市民が巻き添えになり死亡していました。自爆テロを阻止するために壁の建設が始まった時、唯一シモン・ペレスだけが「イスラエルとパレスチナの間には、壁ではなく、橋を架けねばならない」と断言したのです。そう断言したシモン・ペレスと、人間の尊厳を文学によって語り、文学による架け橋をコメントした村上春樹氏が、並んで座っている光景は、私にとっては非常に意味のあるものでした。

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今まで作家個人に興味を持つことはあまりなかったのですが、今回の受賞とスピーチで村上春樹という人物にとても興味が沸き、長い間読んでいなかった氏の作品を、ますます読み返したくなりました。村上春樹という日本の作家が賞を受賞し、イスラエルを訪れ、明確に作家としての意見を述べたことで、イスラエルでの Haruki ファンも増えることだと思います。ひとまずは、村上春樹氏、ご苦労さまでした。

NHK ニュース動画 http://www3.nhk.or.jp/news/k10014185071000.html

授賞式でのスピーチを訳した方のブログ http://d.hatena.ne.jp/nakamu1973/20090217

 

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村上春樹の壁と卵と架け橋」への2件のフィードバック

  1. シモン・ペレス86歳。長生きしてもらいたい。

    私がはじめてイスラエルへ来たのは10年前、その時にAkko旧市街地に惚れて翌年Akko旧市街地のレストランで1か月仕事してた。オーナーはもちろんアラブ人、オーナーの計らいで一緒に働いていたアラブクリスチャンの女性と3人でtzfatから東エルサレムまで連れて行ってくれた。

    その時は今のように政治のことや紛争のこともよくわからなかった。漠然としたものだった。覚えているのは今よりも普通に東エルサレムに行けたこと。それはアラブ人といたからなのか? その時、ガザはまた今度だね~と言っていたのを覚えているが、行かなかったことを後悔している。

    壁が自爆テロを防いでいる良い方面も持っているのかもしれない、でも壁によってそこに行くことに対してより恐怖心ができてしまったように私は感じている。 

    かけ橋か、、・・・・・ エルサレムに不釣り合いな橋ができましたね~。電車が走るんですよね。それなりにライトアップされて綺麗でしたけど・・・。

    そういえばトンネルだか道路を作るってBarakが言っていませんでしたか?

    あらためて思うけど、パレスチナ問題が日本で話題になりだしたのは10年くらいまえからじゃぁないかな?思うと壁ができたあたりから騒ぎ出したように感じるけど?

    • エルサレムの橋、見ましたよ。なんだ、これは?邪魔だな・・・とか思っちゃいました。この10年で随分とイスラエルは変わったという印象があります。壁ができ、アラファトは死に、戦争が起こり、お互いの不信感はぬぐいきれないものとなりましたね。
      私が始めてイスラエルを訪れたのは1992年、湾岸戦争の後でした。エリコもベツレヘムも東エルサレムも、まだインティファーダの余韻が残っていましたが、今のような殺伐とした感じはなかったです。移民してきたばかりの大量のロシア人の存在も感じませんでした。今思えば、インティファーダを経過し、あのオスローへと続く希望の時期だったんですよね。
      それにしても、村上春樹氏のおかげで、随分とイスラエルが日本で話題になりましたね。批判されるばかりなのは仕方がないけれど、たまには褒められるようなことって、ないんでしょうか、この国は。

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