トロイアの女たち感想

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Photo: AviRam Shahino  (The Cameri Theatre in Tel Aviv)

2012年の締めくくり大晦日は、「トロイアの女たち」を観劇してきました。

イスラエル公演の初日の様子は、檀上に登場した蜷川幸雄氏と出演者たちへスタンディングオベーションで喝采が送られたと、日本のほぼ全メディアで報道されました。( NHK NEWS WEB)

もちろんイスラエルでもTVや新聞で紹介され、前売りチケットは完売。在イスラエルの日本人もたくさんの人が観劇に行ったようです。私も若かりし頃は、某団体のミュージカルを見るために新潟-東京を往復していたこともありましたが、蜷川氏の演劇は一度も見たことがなく、出演者に至っては全く無知。ほとんどイスラエル人と同じような状態で、観劇したといえます。 (Israel 10ch TV)

さて、感想ですが、3時間を飽きさせない目にも、耳にも美しく印象的な演出でした。白石加代子さんの演技は、登場してからずっと目が離すことができず、これぞ日本の女優という魅力を見せつけられました。コロスの日本人女優さんたちの演技も非常に素晴らしかったです。ただ、イスラエル人・アラブ人出演者たちの演技が、日本人出演者のそれと比べるとちょっと残念でした。もちろんそれぞれ立派な演技をしているのですが、格が違いすぎです。さすがは、ガラスの仮面が根付く女優魂の国・日本の女優さんたちの演技は本物です。

日本語・ヘブライ語・アラビア語が入り混じり、コロスに至っては同じセリフを3か国語で繰り返すという特殊な演出は、出演者にとっても決して簡単ではなかったと思います。蜷川氏も雑誌のインタビューで答えていますが、イスラエル人・アラブ人出演者には、それぞれの国民性を共有するために、自由に演技をさせたそうです。まぁ、イスラエル人を知る私から言っても、それしか方法はなかったのではないかと思います。

今回のトロイアは、日・イ外交60周年記念事業の最大イベントであり、日本・イスラエル・アラブの異なる国の異なる民族性を持つ人々が、ともに一つの舞台を作りあげ、演じるということに意義があり、それぞれの個性の強い出演者をまとめ作りあげた蜷川氏と、出演者へ賛辞を贈るべきものです。

公演を見終えた後、エスティとニューイヤーを祝いながら、たくさん話をしました。エスティ曰く、このトロイアの女たちはフェスティバルなどでの公演ほほうが向いていて、すでに世界各国の演劇フェスティバルからオファーが来ているそうです。それと、3時間も演劇を見る忍耐はイスラエル人にはないから、3か国語の繰り返しを変えたらどうか、とか、セリフを短くしたらどうか、という話がでたらしいですが、蜷川氏は決して演出を変えることはなかったそうです。

また、ギリシア悲劇「トロイアの女たち」を、イスラエルの現状と重ねるのは安易かもしれませんが、私はイスラエル人・アラブ人出演者が、演技の中で戦争の勝者・敗者として演じる姿、そしてセリフに、イスラエルとパレスチナを投影せずにはいられませんでした。今現在、実際に争っているイスラエルとパレスチナ、双方とも親や子供を殺され私怨を抱えながら日々生活をしている民族が、同じ悲劇のセリフを口にするのは、非常に複雑な気分であると同時に、遣り切れない気持ちになるのです。きっと、それこそが蜷川氏がこの演目を決め、演出をしたことの意図だったのかもしれません。戦争をしている者同士に戦争の悲劇を演じさせるという、なんとも痛く重く、皮肉の効いた演出です。

東京公演直前のガザ紛争の際には、プライベートでは多少の口論もあったようですが、しかし舞台稽古では、決して争うことなく、出演者全員が平常心でいたと、エスティが語っていました。

イスラエルで蜷川氏のトロイアがどのように評価されたかは、演劇評論家の記事を読む限り、ほぼ私の意見と変わりのない評論でした。「世界の蜷川が演出する3か国・3民族・3言語の共演というプロジェクト自体は最高に面白く素晴らしい。しかし、日本人出演者の素晴らしい演技、アラブ人の力演、個性が定着してしまっているイスラエル人のハマらない演技、3か国語でセリフを繰り返すのは、はじめは興味があったが、途中から飽きる。」という辛口批評です。

エスティは公演のため50日間東京に滞在し、日本が大好きになって帰ってきました。以前は全く日本を知らなかった彼女の口から「イケブクロ・シブヤ・ウドン・ジシン」なんて言葉が頻繁に出てくると、自然と笑みがこぼれてしまいます。「日本に滞在し、日本人と仕事をして日本を知ることで、keikoがどう感じ、どう思ているのか、今までよりもずっと分かるようになったわ」と言ってくれました。感動屋のエスティは、何度も日本で感動して泣いたことでしょう。

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今日がイスラエル公演最終日。出演者・スタッフの方々、本当にご苦労様でした。そして、素晴らしい公演をありがとうございました。 また、エスティからも東京公演に来てくれた方々に、感謝の気持ちを伝えてほしいと言付かっています。(FaceBook : The Cameri Theatre 出演者の画像

そして、私のブログを見て興味を持ち、公演に行ってくれた方々、本当にありがとうございました。こうしたイベントで、戦争だけではない、イスラエルのアーティストたちの姿を知ってもらえるのは、心から嬉しいことです。1月13日には京都でダンスコラボレーションもあります。是非、興味のある方は参加してみてください。

307194_10151293001386839_2048361383_n (2012年大晦日公演後のエスティと乾杯)

皆様、今年もよろしくお願いします。
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トロイアの女たち感想」への2件のフィードバック

  1. あけましておめでとう。

    感想観たあとに言おうと思ったけど、ネタばれになってしまうといけないので、言わずにいました。

    >3か国語でセリフを繰り返すのは、はじめは興味があったが、途中から飽きる

    確かに。ごめんね、前半は途中から居眠りしてしまいました。
    でも後半はずっと釘付けだったよ。
    白石さんの演技は秀でてましたね。最初すごすぎてちょっと引いてしまったけど。
    声の出し方が全然違うよね。
    和央ようかさんの出番が少なくて残念でした。
    東京公演は彼女のファンがたくさん来ていました。
    正直彼女の演技はイマイチだったけど、それも含めてヘレネはいやな女と見れなくもなかったけど。
    とても美しいし。

    最後地震が起きるところは、今の日本にも通じるところがありました。

    一言で感想を言うと、辛口批評のように嘆き、悲しみ、苦しみの表現がややくどい3時間、でも本当の苦しみはいくらくどくしても表現しきれないよね。

    視覚、聴覚にも訴えてきたね、そちらでも舞台の転換早かった?
    こっちはあっという間だったよ、ドリフとは違う(笑)

    エスティさんは、遠くからみていても品が良く、所作が綺麗な人だなーという印象でした。

    • よっちゃん、ありがとう。白石さんだけはもう別格だったね。もっと白石さんの演劇が見たくなりました。和央ようかさんの出番も、もっと作ってほしかった。演技はさておきあの美しさだけでも、ずっと見ていたかったわ。蜷川さんの演出にも興味がでたので、機会があったら日本で観劇したいと思います。イスラエル人は、何をしても素のキャラのままになってしまうのが、非常に残念でした。

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